【会社四季報】70周年と90周年。擦り切れた四季報と、新しい四季報。20年という時間」

株主優待・資産運用

20年ぶりに、本棚から1冊の本を引っ張り出しました。『会社四季報』2006年3集・夏号。私が株式投資を始めて、いちばん最初に買った四季報です。

そして今年、書店で手に取ったのが2026年3集・夏号。表紙には「創刊90周年記念号」の文字。20年前に私が買った号は、ちょうど「創刊70周年記念号」でした。70周年と90周年。20年の歳月が、ぴったり2冊のあいだに挟まっている——そう気づいた瞬間、しばらく手が止まりました。

今日は、この2冊を並べて見比べながら、20年で変わったこと、変わらなかったことを書いてみたいと思います。

70周年号と90周年号、20年ぶりの再会

まずは表紙から。

2006年の70周年号は、横浜のビル群とゴールドの「70」のオブジェが輝く、いかにも「これから伸びるぞ」という勢いのあるデザイン。キャッチコピーは「2007-08年 最高益続出」。全上場3849社の2期予想を載せ、「5大特別付録」をうたっています。リーマン・ショック前夜の、あの高揚した空気をそのまま閉じ込めたような表紙です。

対して2026年の90周年号は、色とりどりの花が咲き乱れる一本の木の絵。キャッチは「激動環境の企業業績を大展望」。全上場3824社の業績を独自2期予想、と書かれています。

並べてみて、まず数字に目がいきました。上場社数は3849社から3824社へ。20年経って、ほぼ横ばいなんですね。これは少し意外でした。新規上場が次々あった一方で、TOBやMBO、上場廃止も同じくらい起きていた——最近、私のブログでもツインバードやサツドラの話題を書いたばかりですが、まさにその縮図がここにあります。

厚みも、紙質も変わっていた

2冊を並べて、ちょっと意外なことに気づきました。新しい90周年号のほうが、わずかに薄いのです。

掲載社数はほぼ同じ(3849社→3824社)なのに、厚みは逆転している。手に取ってみると理由はすぐにわかりました。紙質が変わったんですね。今の四季報は紙が薄く軽く、それでいてめくりやすい。20年で印刷や製本の技術がそれだけ進んだ、ということなのでしょう。

もっとも、古い70周年号が厚く見えるのには、もうひとつ理由があります。20年分の使用感です。私が貼った付箋がページのあちこちから飛び出し、めくり癖がついて、本そのものがふっくらと膨らんでいる。並べてみると、片方は「読み込まれた本」の顔をしていて、もう片方はまだ真新しい。同じタイトルの本なのに、たどってきた時間がそのまま厚みに出ているようで、なんだか可笑しくなりました。

中身で大きいのは、DOE(自己資本配当率)の掲載開始です。90周年号は「株主還元の注目指標」としてDOEを前面に出しています。私のように株主優待と高配当を軸に投資をしている人間からすると、これは地味に大きな変化です。20年前、配当をこういう角度から見る発想は、少なくとも個人投資家の主流ではありませんでした。「株主還元」という言葉そのものが、この20年でぐっと身近になったのを感じます。

もうひとつ面白いのが、90周年号には「創刊号」の電子版閲覧サービスが付いていること。1936年の創刊号が読める、というわけです。紙の四季報が、電子の入り口も兼ねている。時代だなあ、と思います。

ちなみに、同じ会社のページを2冊で見比べてみるのも、これがなかなか面白いのです。寿スピリッツ(2222)や富士フイルム、ハウス食品やカゴメ……20年でこんなに業績の景色が変わったのか、と見入ってしまいました。ただ、これは一社ずつじっくり語りたいので、また別の機会に改めて取り上げたいと思います。

あのころは、四季報しかなかった

ページをめくりながら、20年前を思い出していました。

正直に言うと、当時はまだ株式売買のハードルがずいぶん高かった。購入手数料も今とは比べものにならないくらい高く、ネット証券で気軽にポチッと、という感覚はありませんでした。一回の売買をするのに、けっこうな覚悟が要ったものです。

そして何より、情報源が四季報しかなかった。今でこそネットを開けば、決算情報も、アナリストの分析も、個人投資家のブログも、無料でいくらでも手に入ります。でも当時の私にとって、企業の業績や財務をまとまった形で知る手段は、ほぼこの一冊だけでした。だから付箋を貼り、赤ペンで囲み、それこそ擦り切れるまで読み込んだものです。

今回めくった90周年号にも、私はさっそく付箋を貼りました。日立、コマツ、住友重機……。20年前と同じように、気になる企業のページに手が伸びる。道具は変わっても、やっていることは案外変わっていないのかもしれません。

20年で変わったもの、変わらないもの

こうして2冊を並べてみると、変わったものははっきりしています。情報の量も、売買のしやすさも、手数料も、そして指標の考え方も。20年前には想像もしなかった環境で、今の私は投資をしています。

でも、変わらないものもありました。

四半期ごとに分厚い四季報が出て、私はそれを買い、付箋を貼り、気になる会社のページに見入る。この「ひとつひとつの会社と向き合う時間」だけは、20年前とまったく同じです。ネットでいくらでも情報が手に入る時代になっても、紙の四季報を一冊まるごと持っている安心感は、やっぱり手放せません。

90周年号の表紙の、花咲く一本の木。あの絵をしばらく眺めていました。次にこの本棚から四季報を引っ張り出して並べるのは、いつになるでしょうか。100周年号のとき、私はどんな投資家になっているのか。そんなことを考えながら、新しい四季報にそっと付箋を一枚、足しました。

北の大地・十勝より。今日も気になる一社のページを、ゆっくりめくっています。

tokachi_sky (とかちスカイ)トニー@北の大地十勝 Kita-no-Daichi Tokachi

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